管轄とは、その裁判事件について、取り扱うことができる裁判所をいいます。
調停・審判・訴訟など裁判所で行われる手続きには、すべて「管轄裁判所」が法律で決まっています。
破産申立をする上で検討するべき管轄は土地管轄です。
土地管轄とは,どこにある裁判所が破産事件を担当するのかという問題のことをいいます。
破産事件では,破産法等によって,裁判所の管轄が定められています。
破産事件の職分管轄は地方裁判所とされており、土地管轄も決められています。
破産申立は,破産法等で定められている土地管轄のある地方裁判所に申立てをしなければなりません。
では、破産法を見ていきましょう。
【破産法】
第四条 この法律の規定による破産手続開始の申立ては、債務者が個人である場合には日本国内に営業所、住所、居所又は財産を有するときに限り、法人その他の社団又は財団である場合には日本国内に営業所、事務所又は財産を有するときに限り、することができる。
2 民事訴訟法(平成八年法律第百九号)の規定により裁判上の請求をすることができる債権は、日本国内にあるものとみなす。
第五条 破産事件は、債務者が、営業者であるときはその主たる営業所の所在地、営業者で外国に主たる営業所を有するものであるときは日本におけるその主たる営業所の所在地、営業者でないとき又は営業者であっても営業所を有しないときはその普通裁判籍の所在地を管轄する地方裁判所が管轄する。
2 前項の規定による管轄裁判所がないときは、破産事件は、債務者の財産の所在地(債権については、裁判上の請求をすることができる地)を管轄する地方裁判所が管轄する。
次に「普通裁判籍」を規定した民事訴訟法を見てみましょう。
【民事訴訟法】
第4条
第1項 訴えは,被告の普通裁判籍の所在地を管轄する裁判所の管轄に属する。
第2項 人の普通裁判籍は,住所により,日本国内に住所がないとき又は住所が知れないときは居所により,日本国内に居所がないとき又は居所が知れないときは最後の住所により定まる。
上記の規定によると、下記のことが言えます。
事業者でない個人や事業者であるものの日本国内に営業所がない場合には,その普通裁判籍の所在地を管轄する地方裁判所が破産管轄を有することになりますので,その裁判所に申立てをすることになります。
個人の普通裁判籍については,民事訴訟法4条2項が定めています。
すなわち、
①事業者ではない場合は、債務者(申立人)の住所地を管轄する地方裁判所(又はその支部)に管轄があるので、その裁判所に申立をすることになります。
住民票上の住所と現住所が異なる場合には,現住所を管轄する地方裁判所(又はその支部)です。
②自己破産をするのが事業者である個人(個人事業主)の場合は、その主たる営業所の所在地(外国に主たる営業所を有するときは、日本におけるその主たる営業所の所在地)を管轄する地方裁判所に管轄があるとされています(破産法5条1項)。
ただし、事業者であっても営業所を有しないときは、債務者の普通裁判籍を管轄する地方裁判所に管轄があります。
個人破産の場合の原則は上記のようになりますが、例外的に、上記で定まる裁判所ではない裁判所に管轄が認められる場合があります。
上記の規定に従って管轄裁判所を定めることができない場合については、例外的に、債務者の財産の所在地(債権については、裁判上の請求をすることができる地)を管轄する地方裁判所が管轄することになります(破産法5条2項)。
上記の規定に従って管轄裁判所を定めることができる場合であっても、例外的に連帯債務者間、主たる債務者と保証人間、夫婦間では、それぞれ一方の破産事件がすでに係属している地方裁判所で、もう一方が申立てをすることが可能とされています(破産法5条7項)。
③法人破産の場合は、個人事業主の自己破産の場合と同様、原則として、「その主たる営業所の所在地(外国に主たる営業所を有するときは、日本におけるその主たる営業所の所在地)」を管轄する地方裁判所に管轄があります(破産法5条1項)。
営業所がないときは、法人の代表者その他の主たる業務担当者の住所地を管轄する地方裁判所の管轄となります(破産法5条1項、民事訴訟法4条4項)。
このとおり破産の申立をする宛先(管轄)一つとっても難しい点がありますので、弁護士にご相談されるべきかと思います。
大阪市中央区の中辻綜合法律事務所は、会社破産(法人破産)、個人破産、企業法務に強い弁護士事務所です。
上記ご説明以外にも倒産、破産、借金返済・支払・取引先の倒産などでお困りの方はどうぞお気軽にご相談ください。